哀しみを生む魅惑の名器『レッドバイオリン』♪
皆さま、こんにちは。
イメージコンサルタントの小林由梨奈です。
私バイオリン始めます☆
と話したら、『レッドバイオリン』という映画をおすすめされたのでさっそく観てみました。
物語は、1681年、バイオリンづくりで名高い街“クレモナ”で始まります。ジブリ映画『耳をすませば』で天沢聖司くんが留学する、あの“クレモナ”です。
ある日、“クレモナ”に住むバイオリン職人の奥様が死産し、母子ともに亡くなってしまいます。その職人が生まれてくるであろう我が子のためにつくったバイオリン。伝説の名器“レッドバイオリン”をめぐる永く壮絶なストーリー。
“レッドバイオリン”の妖魔的な魅力に堕ちた各国の天才奏者たちの呪われた運命と、その狂気じみた超絶技巧を美しい音色と世界観で描いた、哀しくも愛しい作品でした。
こういう、手に入れたら必ず不幸になることが分かっているのに、その危うさゆえに人を魅了して病まないものが、凄く好きです。
私映画やドラマや小説って好きでよくみるんですけど、いつも全体のストーリーをすぐ忘れてしまいます。そして胸打たれたシーンの映像とその時に受けた情動だけがずっと残ります。
そんな私が魅力を感じたポイントをまとめます。
月と妊婦とタロットカード
レッドバイオリンを造ったのは、後にその作品がストラディバリウスを超える値の付くほどの、名器を生み出す職人でした。この人、弟子の造ったバイオリンを叩き割って「その怒りを創作意欲に込めろ!」とか言う人です。だいぶ尖ったマネジメントをする上司。
彼だいぶお年を召しているのですが、奥様もなかなか、初産にしては高齢とのこと。それは生まれてくる子供に期待もしますし、その分不安も高まります。そして奥様は不安のあまり、子供の頃から身の回りの面倒を見てくれている使用人(見た目、魔女です)に、生まれてくる子供の運命を占わせます。この時に引いた5枚のタロットカードが、子供ではなく、レッドバイオリンとそれを手にした5つの時代、5つの国の奏者たちの不幸を運命づけたのですね。
そんな占い結果を受けて不安の絶頂の中の、臨月を迎えた妊婦と尖ったバイオリン職人のコミュニケーションに胸打たれました。
2人で窓から見える三日月を見上げながら、「この月の満ちる頃には、この子も生まれるのね」と、奥様。その力ない不安げな言葉に、ぎゅっと奥様を抱きしめる腕の力を強める旦那様。それに対して奥様、
「私と月の関係に嫉妬しているのね」
すごい。ちょっとなかなかできない返し。気持ちよく分かります。女性の体って、満ちて欠けてく月みたいで、月を見ていると、切ないような狂おしいような気持ちになるのは、月と自分がシンクロしているからだと思っています。
何気ないこの言葉が、凄く繊細で、お洒落で、言い得ていて、しっくりと安心したのでした。
この後、職人は妻子を失った哀しみから、子供のために作ったバイオリンを真っ赤に塗ってしまいます。愛する奥様の髪で作った刷毛を使って。奥様の血を混ぜたニスで。そして彼自信も、命を絶ってしまうのでした。
ここから、“レッドバイオリン”の永い旅が始まります。
儚く脆い超絶技巧の孤児
それから100年経って、レッドバイオリンはオーストリアの修道院の運営する孤児院にたどり着きます。そして1人の少年が、レッドバイオリンの魔力に堕ちます。
彼はその才能を買われ、ウィーンの音楽教師の元でスパルタの特訓を受けます。そしてあるパトロンのオーディションを受けるため、たった3週間で恐ろしいスピードの超絶技巧を身につけます。
だけどこの少年、心臓が弱い。毎晩レッドバイオリンを抱いて(というか抱かれて)眠るのですが、ある夜「そんな弱い人間では世界的なバイオリニストにはなれない」と叱られ、泣く泣く1人で眠ったところ、あまりの喪失感から心臓が止まってしまいます。
なんとも耽美な少年です。
その時は一命をとりとめ、死ぬ気で練習して上達してオーディションに出向くのですが、ドラキュラみたいなパトロンに「このバイオリン、欲しい。触らせて。」と言われただけで、喪失感が蘇ったのか恐れおののいて顔面蒼白し、演奏を促されるも身動きひとつとれず、卒倒してそのまま命を落としてしまいます。
この少年、登場から亡くなるまで圧倒的な存在感で、表情や仕草が言いようもないほどに儚げで脆く、胸を鷲掴みにされっぱなしでした。
そして気持ち悪いくらいぱしゃぱしゃ写真を撮りました(笑)。
神童と呼ばれる子供って、大人の顔してますよね。聡明で繊細で、触れると壊れてしまいそうな。また逆に壊されてしまいそうな。幼くして亡くなると余計にそういう印象を強くします。ピリピリと張りつめた緊張感。その短い命に精一杯の力を込めて、無意識の攻撃を、有限の時を無下に生きている大人に対して放っているような感じがする。
能力の高さと、精神と肉体の弱さのアンバランスが、とても美しい少年でした。
何が凄いって、彼本当に弾いているんです。9歳の体で、大人サイズのバイオリンを。調べてみると役者じゃなくてバイオリニストで、今ではウィーン国立歌劇場の首席奏者として、ウィーンを拠点に世界を舞台に活躍しているようです。
エリザベート好きなのでウィーンずっと行きたいと思っているのですが、さらに1つ、行きたい理由が増えました♪
作曲家と小説家の恋
少年の不運な死を招いたレッドバイオリンは、さらに100年の時を経てジプシーたちの間を渡り歩き、やがてオックスフォードの作曲家のもとにたどり着きます。
この作曲家、小説家である恋人との情事に耽っている間にしか創作ができないという、なんとも芸術家的な芸術家なんです。
小説家の方も小説家の方で、彼の才能と奔放さにインスピレーションを得て執筆活動に勤しんでいました。お互いの創作意欲を高め合う、ちょっと猟奇的だけど素晴らしい関係だったのですね。
ところがある日、彼女の小説の主人公の男性が牧師を殺害し、ロシアに逃亡してしまった(彼女自身が書いているのですが、もはや天才の創作物というものは天から降ってくるのだから彼女の意識は伴ってないんですね。とても他人事のような描写でした。)ために、彼女はロシアに行く必然に迫られます。
そして「私、ロシアに行ってみないとロシアの事書けないわ。」と言って徐に彼を置いて去ってしまうのです。
お互いの存在があってこそ花開く能力によって生かされていた人たちですから、絶対に離れてはいけなかったのですね。案の定作曲家はアヘン中毒になり、最終的に死んでしまいます。
芸術家の愛はずっしりと重く、マリアナ海溝のように深いんです。
離れ離れになった2人の手紙のやりとりが、文面を読み上げて重なり合う互いのささやき声と、積もっていく手紙の山で表現され、それが厳かな川を眺めながら静かで透明な音楽を聴いているように、切なくて心地よくて、哀しかったです。
『耳をすませば』の聖司くんと雫ちゃんを、めちゃくちゃアダルトにするとこんな感じなのかな。惹かれあっている部分は同じような気がしました。
ラルクアンシエル『pieces』を彩る短剣の物語
100年の空白の時間を幾度も経て300年余りに渡って永い旅を続けるレッドバイオリンと、それをめぐる哀しい天才たちのストーリーを観ていて、とても懐かしい映像を思い出しました。
ラルクアンシエル『pieces』のPV。
ちょっとただのPVとは思えない、非常に映画的な世界観の作品。たった6分のセリフなしの映像でどうやったってそんなストーリー伝わらへんやん(笑)っていう、おかしなところに強い想いを込める当時のラルクの魅力の詰まった映像です。
1899年、シチリア。没落貴族の末裔。一族の最期の主が、己の悲運を嘆き、死を目前に1本の短剣に100年の呪いをかけます。その短剣を手にした者は、自らの意思に反して人を殺めてしまうという、100年の長い呪い。そして100年の間にロンドン、ワルシャワ、九龍、シカゴの地でそれぞれに理不尽な殺人を生み、呪いから100年後の1999年、ニューヨークにたどり着いたその短剣はhydeの手に渡り、tetsuを最期の犠牲者としてその呪いの幕を閉じます。
『pieces』は1999年にリリースされたシングルですから、ちょうどレッドバイオリン公開の翌年。PV制作者はこの映画に影響を受けていたのかもしれません。
それにしても私、この時のhydeと同じ年になったんですね。『pieces』のhyde、30歳です。感慨深い。
このpiecesをきっかけに、私はギターを始めました。そして、それから18年経った今、また新しい楽器を始めるきっかけを得たタイミングに、この映像を思い出しました。つくづくと、私の美意識や人生観はhydeによって創られたのだと、感じます(笑)。
100年のブランクもありますし、それ以外にもところどころ描写が途切れていて、観ている人間の解釈でどうにでも創れる部分もあって、観るたび新しい衝撃を受けることのできそうな、深い情緒のある映画でした。
“呪い”って、魅力的なテーマですよね。どんな時も、強い思いは人を動かします。よくも悪くも。
愛しいストーリーと天才たちとアラサー時代のラルクのおかげで、ますますモチベーション高まりました。
そういうわけで、私バイオリン始めます★
明日はきょんのレッスンをのぞきにいきます♪
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