琥珀のもう1つの世界と、夜の海のトランペット吹き

2018.12.04

ブログ

皆さま、こんにちは。
イメージコンサルタントの小林由梨奈です。

8ヶ月をむかえた琥珀♂
最近は、琥珀に会えるのを楽しみにサロンにお越しくださるお客様も増えてきました＾＾

彼はこの世界に生きて８ヶ月経つのですが
朝起きるといつも、初めて見たような表情で世界を眺め

私のことを初めて見た女のように、好奇心たっぷりの疑いの目で見つめます

”お、、お前誰やっけ？”

そうだね
この朝は今しかないし
今日の私は今日しかいないから

彼にとってはいつでも全てが新鮮なのでしょう
存分に”今”を生きている琥珀がとても愛しいし、尊い

愛しさに溺れているうちに、呼び名がどんどん進化し
琥珀　→こはたん　→こはたんさん

今となっては”たんさん”と呼んでいます♡（どこにも原型ない笑）

そんな琥珀が最近、同じ部屋にいるとき
ふとどこかに消えてそのまましばらくいなくなる、ということが起こるようになりました。

しばらく探していると、後ろからひょっこり出てきて

”どうした？俺ここにいるで。”と安心させてくれます。

それから、2,3週間前に失くしたものを
琥珀が口にくわえて立っている、ということもあります。

夜の散歩のときに、誰もいない何もない方を凝視して突然きゅるきゅるするときもあります。
普段まったく声を出さない犬なので、そのきゅるきゅるを聴くと私は切なくなります。

私には見えない、琥珀にだけ見えている世界がある。

たまにそこに行って寛いだり働いたり遊んだりして、またこっちの世界に帰ってくる。
そのときに私の部屋から何かをあちらの世界に持っていって、ついうっかり持って帰ってくるのを忘れてしまう。

たぶん、そういうことなんじゃないかな。

そして今日。
今日は12月とは思えないくらい、とても暖かい日でした。
日中よく晴れ渡った空は、帰りの電車に揺られる頃には大雨になっていて
生暖かい、春のような匂いのするあやしい夜。

琥珀とお散歩に出ると、海の方からごうごうと風が吹いていて、
その不気味な真っ暗闇がなぜだかとても心地よく、私と琥珀は誘われるようにして海の方に足を向けていました。

すると、海岸の手前にある芝生のドッグランに差し掛かったところで
強い風に乗って海の方から、ふいにトランペットの音が聴こえました。

子供の頃、私は京都の丘のふもとに住んでいて、その丘で楽器を練習する人の音をよく、聴くともなく聴いていました。
その頃のことを思い出して、懐かしい気持ちでつい、今度はその音に吸い寄せられるようにして
ドッグランの先の国道を通り過ぎ、夜の海岸に降りました。

琥珀と私は毎朝海辺を散歩するのですが
夜は真っ暗で怖いから、普段は海岸には行きません。
だけどどうしても、この耳に触れるトランペットの音をもっとしっかり聴きたくて
吹いている人の姿が見たくて、その時は怖い気持ちなんてどこかに吹き飛んでいました。

海岸に降りると、いよいよはっきりとトランペットの音が聴こえてきます。
そしてしばらく歩くと楽器を持つ人のシルエットが見えてきて、私はなんだかとても安心しました。

その人は波打ち際に立ち、夜の黒い海に向かってトランペットを吹いていました。

顔はまったく見えません。
男性か女性かも、年齢も国籍もまったく分かりません。

海も空も街も、とにかく全てが真っ黒で、黒の濃淡だけでできていました。

強い雨を振らせた後の風が大きな音を立ててごうごうと吹き付け
波はいつになく荒く、白くて太い横縞の泡をたくさん生み出して容赦なくこちら側に寄せては返していきます。

そんな自然の穏やかで激しい美を描く風景と音の上に、知らない人の吹くトランペットの練習音が伸びやかに広がり
いつしかその音は私の知っている※クラシックの名曲を奏でていました。

私は彼から数十メートル離れた波打ち際に立ち、彼の吹く音を聴きながら
なぜだか分からないけれど言葉で表現しきれないくらいの暖かな幸福を感じていました。

風が顔に髪を吹き付けるのも、波が足を濡らすのもかまわず
琥珀と彼と3人で、同じ黒い空間を見つめて、そこにゆったり身を委ねていました。

とても不思議な時間でした。
帰ろうとして歩き出すと、トランペットの音は止み

振り返ると、そこには誰もいませんでした。
広い由比ガ浜海岸の、見渡す限りのどこにも、1人も人はいませんでした。

私もしかして、琥珀がいつも私の留守中、1人遊びをしている世界へ
一瞬連れて行ってもらえたのかもしれません＾＾

こんなにスリリングでファンタジーで心に情景が焼き付いて離れない
夜のデートは初めてです笑

この間だけぽっかりと、雨は降り止んでいました。

村上春樹の『スプートニクの恋人』のギリシャの島の一夜みたいな夜でした。
彼の作品の中で、私の一番好きな小説です。

※曲が分かりました。
次の日、たまたまAmazonで映画サーフィンしていて、たまたまレコメンドされた”ティファニーで朝食を”を
たまたま気になって再生してみたら、オープニングに流れてきました。”ムーンリバー”という曲。クラシックではありませんでした笑
”ティファニーで朝食を”を観たのは、10年ぶり2回目。不思議な巡り合わせです。

2つの世界を行き来する、人間意外の生き物とともに生活するのは、とても奥深い特別な時間です。

私たちがテラスで寛いで海に沈む夕日を眺めているときも
琥珀には見えない。小さすぎて、角度的に。

だけど幸せそう
この顔も